物流代行サービスの仕組みやメリットについて
ECサイトや通信販売を小規模から始めた場合、最初のうちは自社で物流業務をおこなうケースが多くあります。また、先に実店舗を構えており、その延長でECサイトを展開する場合も少なくありません。こうした場合、ECサイト事業が成長すると、物流業務に必要な人員やコストが増大します。その結果、物流業務が他の業務を圧迫する状況に陥ってしまいます。そこで、物流業務のアウトソーシングを導入する必要性がでてきます。
物流代行とは
ECサイトで販売している商品の梱包や発送、さらには在庫管理といった業務を自社の代わりにプロがおこなってくれるサービスです。発送代行とも呼ばれます。伝票発行や出荷、配送管理などその内容は多岐に渡ります。業者により請け負う範囲は異なるため、委託したい業務範囲を決めてから業者を選ぶ必要があります。
物流代行サービスを導入するタイミング
以下のような場合には、物流代行を利用した方が効率が上がります。
発送コストがかかりすぎている
発送業務にコストがかかりすぎている場合は、物流代行を利用した方がコストが安くなることがあります。発送業務に必要な作業が増えるほど、それにかかる人件費や倉庫費も増えてしまいます。発送業務にかかる費用と、物流代行業者に委託した場合の費用とを算出し比較検討すると、よりコストを抑えられる方を選ぶことができます。
発送業務が主業務になっている
発送業務に時間をかけすぎていると、他業務に割けられる時間が少なくなります。企画や作成など本来の業務に手が回らなくなると、経営状況が悪化することもあります。業務の効率化を図るためには、物流代行サービスを利用することも選択肢の一つといえます。
大量発送を予定している
大量注文が予想される場合、通常よりも発送業務に対応する時間が増えます。大量だと発送ミスが起こる可能性も高くなります。相談すれば、見積りや予定を擦り合わせてくれる物流代行業者もあるため、検討するのも良いといえます。その際は、自社で発送業務をおこなう場合と物流代行業者へ委託する場合とを比較し、スケジュール面とコスト面とで効率の良い方を選びます。
物流代行に委託できる商品
食品や飲料から小物やインテリアまで、委託できる商品は多くあります。化粧品や衣類、スポーツ用品や家電も対応可能です。委託できないものとしては、生鮮食品や中古商品、大型家具が挙げられます。医薬品も委託できません。委託できるものとできないものの分類は、各業者のホームページに記載されているため、事前に確認しておきます。
物流代行に委託できる業務
以下の業務を物流代行に委託できます。
入庫や在庫管理
商品を倉庫に入れる入庫や、在庫管理を担ってくれます。
検品や流通加工
広告またはカタログの同封やシールの貼付など、商品の付加価値を高める流通加工もおこなってくれます。リボンやメッセージを同梱したギフトラッピングも可能です。
ピッキング
保管している場所から商品をピックアップする作業です。
梱包・出荷・配送
ダンボールなど梱包材の組み立てから、緩衝材や納品書と一緒に商品を梱包し出荷するまでの業務です。
費用
物流代行サービスを利用する際には、さまざまな費用がかかります。主に次のものが挙げられます。
基本費用
管理費用やシステム費用を指します。固定費のため、発送個数が少ない場合は、1個あたりの費用負担は大きくなります。
入庫費用
商品を倉庫へ移動させる作業にかかる費用を指します。商品が倉庫へ到着した際に、個数をチェックする検品作業も含まれます。
入庫費用は、荷物の量によって変わる変動費です。
梱包費用
倉庫からピッキングした商品を梱包する際にかかる費用を指します。ダンボールの組み立てや緩衝材の巻き付けといった作業にも費用がかかります。納品書を同梱する場合など別途費用がかかることもあります。事前に料金の確認をしておきます。
発送費用
倉庫から配送業者へ引き渡し、顧客に配送されるまでにかかる費用を指します。全国一律料金を設定する業者もありますが、配送する地域と荷物の重さによって費用は変わります。
物流代行のメリット
こういった物流代行のメリットには、次のものが挙げられます。
コア業務に専念できる
ECサイト運営や商品開発など、自社のコアとなる業務により多くの時間を割けられます。物流業務の負担を減らし、マーケティングやコンテンツ制作に時間と人員を充てられるため、収益増大が期待できます。
物流の質が上がる
ノウハウや仕組みなどの専門知識をもつプロに委託できるため、発送ミスが大幅に減少します。物流品質は、顧客満足度やリピートに大きく影響します。口コミや評価は、商品を購入する際の重要な情報です。物流業務を自社でおこなう場合は、限られた人員と時間の中で遂行しなければならないため、誤発送や遅延などの問題が起こりやすいです。物流代行サービスを利用することで、そうしたリスクは避けられます。
在庫保管スペースが不要になる
社内で在庫を抱える必要がなくなるため、そのスペースを他の用途に活用できます。また、倉庫を借りる必要がなくなるため、賃料の削減にもつながります。
物流代行のデメリット
メリットがある一方で、デメリットもあります。次のものが挙げられます。
自社に物流のノウハウが蓄積されない
外部に委託することで、社員は物流業務に携わらなくなります。結果、物流のノウハウをえられません。そのため、物流代行サービスの利用をやめたあとに、自社で物流業務をおこなうことは困難になります。将来的に自社で物流業務をおこなう可能性がある場合は、研修を受けさせるなどノウハウを共有すると良いといえます。
想定外の対応が難しい
多くの物流代行では、あらかじめ定められた規定に沿って業務が進められます。そのため、想定外の依頼や突発的な状況には対応が難しいです。柔軟な対応が困難である点は、デメリットといえます。
個人情報流出の危険がある
自社がもつ顧客の情報を、物流代行業者と共有する必要があります。顧客の個人情報を管理するところが2社になれば、流出する危険性も上がります。物流代行業者へ委託する際は、信頼できる業者かどうかの見極めが重要です。
物流代行業者を選ぶ際のポイント
物流代行業者を選ぶ際には、次の点に着目します。
料金
料金設定が安い業者は一見すると魅力的ですが、サービスの内容が不十分であったり追加料金が発生したりと、問題が起こることもよくあります。料金明細を提示してもらうなど、不明瞭な点を残さないように注意が必要です。
実績
実績から、業者の信頼性や安全性を確認できます。実際に利用した人の口コミをみてみるのも良い方法です。業者のホームページだけでなく、SNSから情報をえられることも多々あります。
サポート体制
不明点や疑問点があった場合の問い合わせ先や対応可能時間を確認しておきます。配送する荷物が住所不明であった場合など、顧客に配送する過程で起こったトラブルへの対応も業者によって異なります。信頼関係を築くためにも、トラブル発生時の対応は把握が必要です。
物流代行サービスの種類
物流代行サービスには2種類あります。サービスの種類も、物流代行業者を選ぶ際に参考にします。
定額系物流サービス
提供するサービス内容と料金があらかじめ決まっています。そのため、コストの概算が容易です。また、商品1個からでも利用可能なため、小規模から始められます。ただし、決まったサービス以外は対応できません。
カスタム系物流サービス
自社の希望に合わせてサービス内容をカスタマイズできます。そのため、定額系よりも柔軟な対応が可能です。ただし、契約の際に交渉が必要です。さらに、カスタマイズできる分、コストも上がります。
まとめ
物流代行サービスを利用することで、コア業務に必要な人員や時間を確保することができます。しかし、メリットがある一方でデメリットもあります。現在の事業拡大だけでなく、将来をも見据えた事業計画が必要です。業務効率化を図るために、物流代行サービスの利用を検討するのも一つの選択肢といえます。